映像研には手を出すな!がヤベエ

映像研には手を出すな!を読んだ。感想を一言で言えば、「ヤベエ漫画が出て来やがったぜ」。 それ町*1のようなハイコンテクストなギャグを挟みながら、それでいてアツい漫画だった。

まだ読んでない?一話だけならタダで読めるぞ! spi-net.jp

もしまだこの漫画を読まずにこの記事を読もうとしているなら辞めたほうが良い。こんな良い漫画のネタバレを見てしまうなんて勿体無い。早く本屋に走るかkindleで買え!

読んだか?読んだな!

以下つらつら好きなポイントやら気付きやらを羅列する。

浅草みどり

設定を考えるのが好きで、背景(というより世界観?)を描くのが得意。人物を描くのは得意ではない。 それ町の歩鳥っぽいキャラ。普段アホだけど憎めないやつで、ふとした時に冴えた事を言う。 「きっかけやら環境が整わんと何もできない*2」と主張するように、実は案外ビビリ。 作者の分身。作者はどうやら未来少年コナンが好きらしい。

水崎ツバメ

財閥令嬢。初登場シーン*3ではいけ好かない顔をしておる。 みどりとは対称的に人物(やその動き)を描くのが得意。 いけ好かない奴かと思いきや、みどりと同じ位アホ。

森さやか

アホ2人のまとめ役。お金の話が好きで美脚(キャラ紹介)。 本作で一番好きなキャラ。

みどりがさやかにアニ研に行こうと誘った際、さやかはすげなく拒否している*4。 しかし、みどりが実際に絵を書いたのを見た途端(牛乳を要求はするけども)、行くことに同意する*5。 どうやらさやかはコイツはやる奴だと認めた相手であれば、そいつに投資してみようと思うタイプであるらしい。 ツバメの絵を見せられた際には、「どうです浅草氏。」とみどりの意見を仰いでいる*6。 この点からも、さやかがみどりを高く評価しているのが分かる。加えて、自分の詳しくない分野であるからきちんと専門家であるみどりの意見を聞く姿勢が良い。また、みどりらを職人として捉えて*7、彼女らが快適に過ごせる様に注力している。

アニ研に入れないなら映像研を作ってしまえなんて言い出すあたり、実はさやかは他の2人に比べて行動力がずば抜けている。面白いから投資してやるという気概は、自分が面白いモノを見たいという実は子供じみた動機に思える。 本作では全編を通して、みどりの妄想が現実を侵食する。いわばこれはごっこ遊びで、その世界に入れるのは少年の心を持っている人間である。にも関わらず、さやかもちゃっかり入っているのだ。ツバメやみどりのアホが際立っているけど、実は一番少年の心を持っているのはさやかかもしれない。

彼女は金が好きというよりも、金の大切さを理解している、という風に感じる。ただ単にがめついというよりは何かをやるためには金が必要という基本的な点(とはいえ高校生でそれをきちんと理解しているのはそう居ないと思う)を理解している。

ツバメがどうして手伝ってくれるのかと聞いた時、さやかは「金の為」と答える*8。 でも、これは方便だろう(みどりとアニ研に行く時にも牛乳を言い訳にしている、金は彼女にとって良い方便なのかもしれない)。 どうせ彼女がこの時考えていたのはこうだ。「なんだか知らんが、面白くなってきやがった」*9

まとめると、彼女は職人を尊敬し、彼らが自由に動けるように奔走する人間である。 彼女から受けるパッと見の印象からは印象からは遠いとても誠実で理想的なリーダー像がそこにある。 そういうキャラを好きになるなという方が無理なのだなぁ。

生徒会

さかき・ソワンデというハーフの書記の子が一番デキるっぽいのが面白い。 「細工は流々仕上げをご覧じろ」なんて言葉、日本人でも知らない人多そうなのにとか考えてた。 人は見かけによらないという話を入れたかったのだろうか。 彼女はさやかと似た人格であると思う。 つまり、自分が認めた人間であれば評価するというタイプ。

上映シーン

カッケエ。面白いのは、みどりが作った世界に生徒たちが引きずり込まれているところ*10。 よくある描写だけど、この作品ではもうちょっと違った趣がある。 先に述べたように、みどりの妄想が現実を侵食するが、それはあくまでも少年の心を持つ人間に対してであったはずである。 そういう世界観の中で、みどりらが作った世界の中に人々を取り込めた。そう考えると、ワクワクしますね。

妄想

森さやかという人格はどうやって作られたのだろう。少し考えてみた。

さやかはツバメと似たような出自の人間だったら面白いなぁと考えていた。 まず、彼女のリーダーシップだ。 みどりやツバメのように、職人が「こういうリーダーが欲しい」という点に辿り着くことはあるだろう。 しかし、さやかはそういう職人ではない。彼女は何かに特化しているわけではないのだ。 そういう人間がどうやってあのリーダーシップを得たのだろう。 彼女が高校生という若さでその始点を得たのは、幼少期からの環境によるのではないかと考えた。 つまり、彼女の家庭は何かを経営していたのではないだろうか。その家庭で受けた教育により彼女は今の人格を得たのでは無いだろうか。 実は彼女が山奥の財閥だったりしたら面白い。

しかし、彼女は別段金持ちという雰囲気を出していない。 それは、彼女が家に反抗している故ではないか。 ツバメがさやかに「足長いね」と言った時に、さやかは軽く受け流している*11。 さやかはスタイルが良いし、多分化粧をすれば中々に美人だろう(ほんまか?)。 自分の容姿のような親から貰ったモノを使わずにやってやるぜという意志からそういう行動をしているとかだったら面白い。

という様なことを考えていたけど、ツバメは金があるはずなのに部のために金を使おうとしてない、なんでだろう。 なんかそれに対する描写あったっけ。

*1:映像研のみどりはそれ町の歩鳥の匂いを感じる

*2:p8 1コマ目

*3:p8 3コマ目

*4:p7 1コマ目

*5:p9 6,7コマ目

*6:p20 2コマ目

*7:p108 6コマ目

*8:p22 5コマ目

*9:p156

*10:p153

*11:p52 4コマ目